かつてのゴールキーパー(GK)の役割は、文字通りゴールを守ることが最重要でした。守備の最後の砦として、シュートを止めることや空中戦でのボールキャッチ、1対1の場面で相手選手にプレッシャーをかけることが主な役割でした。
特に1980年代から1990年代にかけてのGKは、反射神経やジャンプ力などの身体的能力が求められる職人的なポジションと考えられていました。
守備の専門家として活躍したGKには、ピーター・シュマイケルやジャンルイジ・ブッフォンなどの名選手が挙げられます。彼らは伝統的なGKのスタイルを体現し、卓越した反応速度と強いキャッチング能力でゴールを守り抜いてきました。
当時の戦術では、DFラインが高い位置に押し上げられることは少なく、GKがボールを手で扱う機会が多かったため、プレッシャーが比較的少ない状況でプレーできていました。
現代のGKにおいて最も重要な変化の一つが、ビルドアップ能力の向上です。ビルドアップとは、ディフェンスラインから攻撃の基点を作るプロセスを指し、GKがこのプロセスの重要な一部となっています。
以前のGKは、ボールをキャッチした後にロングキックで前線にボールを供給することが主流でしたが、現代ではGK自身がパス回しに積極的に参加し、試合のテンポや方向性をコントロールすることが求められています。
例えば、マンチェスター・シティのエデルソンやバルセロナのマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンといった選手は、足元の技術を駆使して正確なパスを出す能力に長けています。
彼らは短いパスでDFにボールをつなげるだけでなく、ロングパスで一気に相手守備陣を突破する場面でもその技術を発揮します。このようなプレースタイルは、相手のプレッシングを回避するために不可欠であり、チームの戦術を成功させるカギとなっています。
足元の技術は、現代のGKにとって必要不可欠なスキルとなっています。以前はGKがボールを手で扱う場面が多かったため、足元の技術が注目されることはほとんどありませんでした。
しかし、1992年に導入されたバックパスルール(GKがDFからのバックパスを手で扱うことが禁止されるルール)の影響で、足元のプレーが重要視されるようになりました。
具体的には、GKはディフェンダーからのパスを的確に処理し、チームの攻撃の起点となる役割を果たす必要があります。
単に正確なパスを出すだけでなく、相手のプレスをかわしながら適切な選択をする判断力も求められます。このため、GKにはプレッシャー下でも落ち着いてボールを扱う技術とメンタルの強さが必要です。